~ アイウェア文化誌② ~

猫とラウンドフレーム . Ⅱ

 

フジタは1929年にも『自画像』を描いています。

これは現在、「国立近代美術館」所蔵となっています。

フジタは独特のスタンド・カラーのシャツを着て、右手に筆を持っている姿。淡いブルーのシャツ。

 

このフジタが着ているブルーのシャツは、お手製。

フジタはシャツやネクタイはもちろん服やリュックサックまで、自分で縫った。

シンガーのミシンで。

 

 

1916年。第一次大戦の影響から、フジタは巴里から倫敦に渡っています。

倫敦でのフジタは何をしていたのか。

ファッション・デザイナー。

倫敦の「セルリッジ」で、裁縫師として活躍。もちろん、婦人服の。これがまた大いに売れたんだそうです。

フジタが日本を発ってフランスに向ったのは、1913年のことです。

この時のフジタはすでに眼鏡をかけています。が、後のラウンド・フレームではありません。

ややレクタングルに近い眼鏡になっています。それも鼈甲ではなく、スティールのフレーム。

 

 

1921年の『自画像』でもやはりスティールの、レクタングルのフレーム。

ところが、1922年の『自画像』では、鼈甲枠の眼鏡になっています。

言うまでもなく、ラウンド・フレームの。

ここから推測するかぎり、フジタのシンボルでもあったラウンド・フレームは、

1922年にはじまるのではないかと思われます。

 

 

フジタは、1968年、八十一歳で世を去っています。

ざっと五十年近く、ラウンド・フレームを愛用したことになります。

フジタも、ラウンド・フレームもさぞかし幸せだったことでしょう。

 

 


著者:出石尚三氏  服飾評論家

1944年12月16日生まれ。

1964年。ファッション・デザイナー、小林秀夫に弟子入り。

その後、1970年から、ファッション・ライター。

1980年代。「エル・ジャポン」編集長を経て、服飾評論家となる。

 


 

 

先日、さっそく私たちも藤田嗣治展に足を運んでみました♪

“やっぱり実物観ないと”

というのが率直な感想です。

シャツの皺、裸婦の曲線、猫の毛、乳白色の魅力は

それまでのイメージを遥かにこえるものでした。

 

モディリアーニ、シャガール、ピカソは知っていても

何故、フジタについては「?」だったのか・・・

大回顧展なのでドラマチックな彼の生涯にも引き込まれました。

 

妄想好きな私がもしフジタ氏に眼鏡をおすすめするとしたら

墨で描いた繊細な柔らかな線と

シルエット「マストコレクション」がもつ無駄の無いフォルムはイメージが重なります。

 

おかっぱ頭の前髪は真っすぐ切り揃えラウンドフレームと合わせたように

「丸と直線」をマッチさせた”Theo JAMES6″

この2本はいいんじゃないかな

と勝手に楽しんでいます。

 

さぁ、藤田嗣治展も開催期間残りあとわずかです!

実際に足を運ばなければ分からない「刺激と感性」を是非感じて下さい♪

 

「没後50年 藤田嗣治展」

場所:東京都美術館

開催期間:2018年7月31日(火)~10月8日(月・祝)

詳細:https://www.tobikan.jp/exhibition/2018_foujita.html

 

keyboard_arrow_up